高いところへ行きたい。
誰も追いつけないような、そんなところに。
私以外の誰もそこには行けないような、そんなところに。

私は求めている。
私以外の誰も立ち入りようのない、そんな不可侵な居場所を。
共感や愛と言った、不安定なものに依拠しない、絶対的な居場所を。

それはどこにあるのかはわからない。
そもそもこの世界にあるのだろうか。
あるいは天の上、あるいは地の底。

私は寝台に身体を預け、天に向かって腕を伸ばす。
細い。そして、力ない。
こんな手で、いったいなにを掴めるというのだろう。
自分を嗤うかのように、腕の力を抜く。
どさりと、音を立てて腕が落ちる。

眼を閉じる。それまで見えていた世界が、遮断される。
腕を伸ばしてみる。何も、変わらない。
つい先ほどは私自身を失望させた私の腕が、見えない。
瞼を落としたままなら、自分の弱さを知らなくてすむ。
私を愛するあの人も、私を嫌うあの人も。
眼を閉じてしまえば、見えないのは同じだ。

寝返りを打つ。重心が移動する。
胃の中の空気が、音を立てて動く。
心臓の鼓動が、伝わってくる。
瞼の裏にはなにも映らないが、それまで感じられなかったものがはっきりと浮かび上がってくる。

何かを悟ったように、おもむろに眼を開く。
身体を起こすと、背骨が小さく悲鳴を上げる。
まっすぐ見えた目の先には、ひとつの窓があった。

そこから見えた空は、本当に青かった。
見惚れてしまうほどに、小さな私を嘲笑うように。
本当に、本当に、綺麗だった。